TKYTEL COMMENT 15 東京広域電話網 KusaReMKN pepepper yude 2025-10-10 NT 東京 2025 を終えて 1. はじめに 東京広域電話網は、2025 年 9 月 6 日(土曜日)から 7 日(日曜日)に かけて開催された NT 東京 2025 に出展者として参加した。 この文書では、当該イベントの参加にかかる事前準備、出展内容、そして 反省について述べる。 2. 出展内容 東京広域電話網は、2025 年 9 月 6 日(土曜日)から 7 日(日曜日)に かけて開催された NT 東京 2025 に出展者として参加した。「オレオレ IP 電話網を作ってみた!」と題し、IP 電話網を利用した電話のデモンストレ ーションや FAX、モデム通信、ならびに電話機を駆動するための電子工作を 展示した。 3. 出展申し込み 出展に際して、特に機材・設備について下記の通り申し込んだ。 - 机・椅子の利用: セットを使用 - 電源: 100 VA を使用 - 搬入方法: 宅配、及び車を使用 - ブースサイズの希望: 0.5 ブースにしてもいいけど、できるだけ 1 ブースがいい - ブース配置の要望: 可能であれば、場内の少し離れたブースに電話機を設置して通話の 体験を提供したいので、0.5 ブース + 0.5 ブースのような形で配 置していただけると幸いです - 特別な要望: 黒電話を鳴らすため、ベルの音が出ます また、sgch 氏の隣接ブースとなるよう、追加で申し込んだ。 さらに、「少し離れた場所に電話機を設置したい」について、電話機を置 くための台を持ち込むか机を追加でレンタルするかで対応可能であるとの連 絡を受けたため、追加の机をレンタルする旨を連絡した。また、電源につい てはそのままの容量でよい旨の連絡を受けた。 出展申し込み承認と同時に LT 発表の募集があった。LT 発表に向けた準 備に余裕がなかったことから、参加を見送った。 4. 準備 4.1. ネットワーク イベントの約 1 ヶ月前(8 月ごろ)からネットワーク構成についての議 論があった。現地に電話網を引き込み、通話を体験するために各種機器を手 配した。これらの機器にはホスト名等を記載したシールを貼り付けた。 4.1.1. 固定局 既存の東京広域電話網に接続される新規の電話局を構築し、4–5 台程度の 端末を収容できるようにネットワークを構築した。ネットワークは 2 台の コンピュータ(サービスホスト、ソフトウェアルータ)、3 台の VoIP ゲー トウェイ、2 台の電話機、2 台のモデム端末(Apple iBook 及び Fujitsu OASYS)から構成された。このネットワーク及び周辺の技術的な詳細は別の 文書で述べる。 このネットワーク構成の検討は出展の 1 ヶ月近く前(8 月ごろ)から行 われた。しかし、ネットワークの構築それ自体は出展当日に現地で行われ た。 4.1.2. 移動局 既存の東京広域電話網に接続される新規の電話局を構築し、単一の電話機 を接続できるようにネットワークを構築した。ネットワークは 1 台のコン ピュータ(Raspberry Pi 4B+)、1 台の VoIP ゲートウェイ(ICOM VE-TA10)、1 台の電話機(600-A1W)から構成された。このネットワーク及 び周辺の技術的な詳細は別の文書で述べる。 このネットワーク構成の検討は出展の 1–2 週間前から行われた。ネット ワークのうち、インターネットアクセス以外の部分は出展の 1 週間前に構 築され、インターネットアクセスの部分は出展当日に現地で構築された。 4.2. 展示物・その他 頒布物や人員の配置、物品の配置について 8 月時点で計画する動きこそ あれ、具体的な内容は遅々として決定されなかった。出展直前になって、公 衆電話の使い方、及び東京広域電話網についての簡単な説明資料を用意し た。加えて、出展当日に現地で簡易的なポップ等を作成し、掲示した。 5. 出展について ブース展示では、申し込みの通りの資材が提供された。展示物として、1  台の特殊簡易公衆電話(ピンク電話)や 2 台の黒電話(うち、1 台は受話 専用)のほか、データ通信のために Apple iBook 及び Fujitsu OASYS を展示した。また、ブース外でも利用可能な壁掛け黒電話を展示した。 展示の説明では、NTT が PSTN(公衆交換電話網)を廃止し、IP 電話へ移 行したのであるから、私たちにも同様のことができるはずだという考えのも と、実際に自作の電話網を構築したことを紹介した。網の各メンバが独自に 電話局のサーバを設置し、それらをネットワーク越しに接続することで、公 衆網とは独立した電話網を実現したことを説明した。 展示は参加者の幅広い層に好評であった。特に子どもには電話体験を楽し んでいた。中には、公衆電話を使ったことがなかったので、硬貨を投入する まで発信音が聞こえないことを知らなかったという声もあった。大人の参加 者からは、ワープロや黒電話の体験が懐かしいという反応が多く寄せられ た。また、ネットワークに詳しい参加者とは、電話網におけるルーティング に関する話題で大いに盛り上がった。 2 日間の展示の中で、延べ 400 回弱のダイヤルが試みられ、250 回以上 の通話が実現された。グループの参加者のみならず、参加者間の通話も見ら れた。 6. 反省 6.1. 出展や設営について 6.1.1. 資料やシナリオについて 来場者にとってわかりやすい説明資料や展示資料を用意すべきであった。 特に、IP 電話のしくみ等については口頭による説明のみでは伝わりづらい 部分があるため、短めのスライド資料を用意すると良い。また、ポップや画 面に表示する内容を予め決めておくべきであった。写真撮影や SNS 投稿の 可否について明示的に掲示すべきであった。来場者の導線を意識した配置に するとより良い。 出展者による説明のためのシナリオや出展の準備に関する手順書等を事前 に準備しておくべきであった。説明資料やシナリオは来場者の層ごと(子供 向け、大人向け、経験者向け等)に合わせたものを用意するとなお良い。 6.1.2. レイアウトについて 今回の展示は比較的好条件であったと思われる。しかし、申し込んだ内容 では展示のスペースが足りなかった。机の数やサイズによって展示の内容は 大きく左右され得る。展示場所におけるレイアウト等が公開される時期にも よるが、さまざまな条件下を想定して展示物の組み合わせを考えておく必要 がある。壁側の展示スペースを利用できる場合は、イベントの運営者や施設 の管理者と相談の上、壁面を利用した掲示も可能である。 展示に係る配線について、不安全な状態が認められた。配線が床を這う状 態となっており、出展者が数度躓く事態となった。配線を床にテープ等で貼 り付け、あるいは机等に固定する等で状況を改善する必要がある。 展示スペースの前に人が集ってしまうと、他の来場者が展示を見られなく なってしまう。やむを得ず、出展者やそれに準ずる者が展示スペースの前に 立つ際は、展示物を隠さないように気を配るべきである。 6.1.3. 撤収について 展示物の陳列に時間を要したため、展示終了時刻の 1 時間前ごろから部 分的に撤収作業を開始した。これにより、円滑な撤収を実現できた。 ホスト名等を記載したシールによって、各種機器の所有者を容易に判別で きた。しかし、一部のケーブル類においてはシールを貼り付けられておら ず、所有者の判別に手間取っていた場面が見受けられた。また、他人の LAN ケーブルを誤って持ち帰ってしまう事態も発生した。所有者を確認できるシ ール等をあらゆる部材に貼り付けることが必要であると考えられる。 ポップ等の掲示を固定するために、クラフトテープを用いた部分があっ た。クラフトテープの粘着力は比較的強く、貸与されてる資材を傷めるおそ れがあるため、代わりにマスキングテープを用いると良い。あるいは、敷き 布等を用いることにより、貸与されている資材を傷めない ようにすると良い。 6.2. 展示物について 6.2.1. 電話機・音声通話について 展示に用いた電話機の数は妥当であったと思われる。しかし、展示のため のスペースに見合わないため、検討が必要である。通話の体験をする際、話 中で繋がらないことを回避するため、台数やスペースとの兼ね合いを調整し ながら発信用の端末と着信用の端末とを分けたほうが良いかもしれない。 子どもの参加者においては、ダイヤル電話の操作に慣れない者も多く、通 話の体験に手間取っていた。10 pps の電話機ではダイヤル速度が遅く、ダ イヤルに失敗した際に多くの時間的ロスが発生していた。体験をより向上さ せるため、プッシュ式の電話機を用いることや 20 pps の電話機を用いてダ イヤルに要する時間を短縮することも視野に入れるべきかもしれない。しか し、無闇に新しい電話機を導入すると陳腐に見えることから、601-P 程度を 限界とするのが良いと思われる。また、601 形電話機においては、ダイヤル を廻す際に机上で滑ってしまう場面があった。滑り止めシート等を用いる か、600 形など重量のある電話機を用いることで改善できると思われる。 出展会場における喧騒によって、受話器からの音声を聞き取りづらい場面 があった。これを解決するため、送受話の音量を大きくするように VoIP ゲ ートウェイの設定を変更しておくと良い。 公衆電話機を用いた通話体験においては、定期的に電話機から硬貨を取り 出す作業であり、少々手間取っていた。これを解決するため、投入された硬 貨を自動的に排出する仕組みがあると便利である。また、実際の硬貨を利用 していたことから、硬貨の紛失や盗難が懸念された。大きさの近い平座金な ど、疑似硬貨を代用することで対応できると考えられる。 6.2.2. ワープロ・データ通信について ワープロに何かよくわからないものが表示されていても来場者は気が惹か れないと思われる。ダイヤルアップ通信の例としてワープロに搭載されてい るブラウザを用いる場合、例えば “阿部寛のホームページ” 等のわかりやす いウェブページにすると良い。ワープロの画面領域は現代のコンピュータに 比べて小さく、表示可能な内容は部分的になりがちであるため、部分的に表 示されない領域があっても特徴を把握しやすいものが良い。 ダイヤルアップ接続中の音があると、より参加者を惹き付けられたと思わ れる。しかし、出展会場における喧騒の中でも聞こえるような大音量のスピ ーカを接続するためには、若干の改造が必要だと思われるため、検討する必 要がある。あるいは、接続音を聞くことさえ叶えば良いのであれば、モデム と並列に電話機を接続することで実現できる。 6.2.3. その他 出展当日のトラブルに対応できるようにしておく必要がある。ローゼット の結線調整用のドライバや回路の動作確認のためのテスタ等を用意しておく とトラブル発生時にも対応できる。 6.3. サービス設計について 通話の体験に際して、番号のダイヤルに要する時間が長いようであった。 電話番号を短くすることのほか、電話番号に含まれる ‘0’ や ‘9’ などダイ ヤルに長い時間を要する数を減らすことによって解決できる。しかし、全て の桁を短時間でダイヤルできてしまっては面白みに欠けるため、“101” のよ うにダイヤル時間に変化のある番号にするとより良い。 出展の内容として、東京広域電話網は電話網を展示するものであるから、 会場の参加者が網に参加できるような仕組みがあると良い。しかし、これを 実現するためには技術的な側面等から検討が必要である。 今回は状況が良く、インターネットへのアクセスがあった。しかし、外部 の局との通信状況が良いとは限らず、音声が途切れる等相手の話を認識でき ない場合があった。このことから、インターネットへのアクセスがなくても 成立するような出展内容を考慮する必要がある。現地に設置する電話局内に 自動応答番号を用意することで、現地の人間同士の通話を利用できない状況 にも効率的に通話の体験を提供できる。 6.4. その他 今回のイベント会場は東京都であったため、全国からの移動が比較的容易 であったと考えられる。イベントが開催される位置によっては、出展者の参 加の可否が左右されるであろう。今回と同様の人員を確保すると、関東地方 や中部地方、遠くても北陸地方になると思われる。また、遠方の地点に開催 されるイベントに参加するのであれば、1 日間のみの参加にせざるを得ない と思われる。 7. おわりに 出展の前日あるいは当日であるか否かにかかわらず、常日頃からきちんと 睡眠をとるべきである。また、他人にそそのかされて軽率に出展を決める前 に、一旦立ち止まって冷静になるべきである。 以上