TKYTEL COMMENT 24 KusaReMKN 2025-12-30 電話網における経路探索のための経路コスト関数について 1. はじめに Mantela を用いれば各局の接続状況がわかるから、自局から他の端末を呼 び出すための番号を検索できる。これを実装したものが Jiminy 氏によって 一時的に公開されていた。この時点では、局ホップを実現できていなかった ため、経路探索は直接到達可能な局間の通信であることを以て到達可能か否 かを判断するのみでよかった。しかし、現時点では局ホップの実現が完了し ており、最適な経路を探索する問題は既に十分面白みを帯びている。 ここでは、電話網の経路におけるコストを「呼び出しに掛かる時間」であ るとし、最適な経路探索のための経路評価アルゴリズムに適用できるコスト 関数について検討する。ダイヤルパルス信号(DP 信号)による呼び出しを 考慮する場合、呼び出し番号の桁数のみならず、DP 信号を送出する時間を も考慮する必要があることを示唆する。 なお、この投稿は、この段落及び 7. を除いて Discord グループ「東京 広域」に投稿されたメモを加筆・修正し、再構成した上でメイリングリスト に投稿したものと同一である。 2. 押しボタンダイヤル信号の場合 押しボタンダイヤル信号(PB 信号)を用いて呼び出し信号を送出する場 合、信号の最小周期(信号を送出する時間と休止時間との和)は 120 ミリ 秒であることが規定されている。この値は送出する信号によって変化しない から、呼び出し時間は呼び出し番号の桁数のみに依存する。PB 信号におけ る呼び出し番号 d のコスト関数を Cpb(d) は以下の疑似コードで与えられ る。ただし、len(d) は d の桁数である。 Cpb(d) { return ( 120 * len(d) ); } 3. ダイヤルパルス信号の場合 DP 信号の場合、信号の周期は送出する信号によって変化する。信号 1 を 送出する場合が最も短く、信号 0 を送出する場合が最も長い。ダイヤルを 回すための時間を無視し、信号速度 10 pps を仮定すると、その差は 900 ミリ秒になる。また、呼び出し番号の桁数が増加すると呼び出し時間は当然 に増加する。10 pps 及び 20 pps の DP 信号における呼び出し番号 d のコ スト関数を Cdp1(d) 及び Cdp2(d) は以下の疑似コードで与えられる。ただ し、d[i] は d の i 桁目の番号である。 Cdp1(d) { cost = 600 * len(d); for i = 1 to len(d) { cost += 100 * (((d[i] + 9) mod 10) + 1); } return ( cost ); } Cdp2(d) { cost = 450 * len(d); for i = 1 to len(d) { cost += 50 * (((d[i] + 9) mod 10) + 1); } return ( cost ); } 4. 具体例を用いた試算 東京広域電話網における MOYASHITEL 局(MOY)から YUDE 局(YUD)の端 末 200 番までの経路として、MIKANETEL 局(MIK)、JIMINY PUBLIC 局 (JIP)、及び JIMINY LOCAL 局(JIL)を経由する場合について検討してみ る。 それぞれの呼び出し番号の桁数は等しいから、PB 信号を用いて呼び出す 場合のコストはいづれの場合も等しい。しかし、DP 信号を用いて呼び出す 場合のコストは異なる。特に、パルス周期の長い 10 pps では、その差が顕 著に現れている。 4.1. MOY-MIK-YUD(0510 0390 200) Cpb(0510 0390 200) = 200 * 11 = 1320 Cdp1(0510 0390 200) = 600 * 11 + 100 * ( 10 + 5 + 1 + ... + 2 + 10 + 10 ) = 14600 Cdp2(0510 0390 200) = 450 * 11 + 50 * ( 10 + 5 + 1 + ... + 2 + 10 + 10 ) = 8950 4.2. MOY-JIP-YUD(0108 0390 200) Cpb(0108 0390 200) = 200 * 11 = 1320 Cdp1(0108 0390 200) = 600 * 11 + 100 * ( 10 + 1 + 10 + ... + 2 + 10 + 10 ) = 14900 Cdp2(0108 0390 200) = 450 * 11 + 50 * ( 10 + 1 + 10 + ... + 2 + 10 + 10 ) = 9100 4.3. MOY-JIL-YUD(0119 0390 200) Cpb(0119 0390 200) = 200 * 11 = 1320 Cdp1(0119 0390 200) = 600 * 11 + 100 * ( 10 + 1 + 1 + ... + 2 + 10 + 10 ) = 14600 Cdp2(0119 0390 200) = 450 * 11 + 50 * ( 10 + 1 + 1 + ... + 2 + 10 + 10 ) = 8700 5. もっと意図的な例 呼び出し番号 00 と 1111 とを比べてみる。10 pps の DP 信号によって 呼び出し信号を送出する場合、桁数の大小とコストの大小とが反転する。 Cpb1(00) = 600 * 2 + 100 * ( 10 + 10 ) = 3200 Cpb1(1111) = 600 * 4 + 100 * ( 1 + 1 + 1 + 1 ) = 2800 6. おわりに 電話網の経路におけるコストを「呼び出しに掛かる時間」であるとした場 合の、最適な経路探索のための経路評価アルゴリズムに適用できるコスト関 数について検討した。DP 信号による呼び出しを考慮する場合、呼び出し番 号の桁数だけでなく、DP 信号を送出する時間をも考慮する必要があること を示唆した。東京広域電話網内の端末における黒電話の割合は無視できない ため、DP 信号のための最適化は必要であると考えられる。 7. 履歴 この投稿の元となった最初のメモは 2025 年 2 月 19 日に「東京広域」 へ投稿された。そのメモは次のリンクにある: この投稿の元となったメイルは 2025 年 2 月 27 日にメイリングリスト へ投稿された。その投稿は次のリンクにある: 8. 参考 - 技術参考資料:電話サービスのインタフェース: 以上